補助金の加点措置とは？
補助金の公募においては、申請者の事業計画や要件適合性などを総合的に審査し、採択・不採択を決定します。その際、「特定の条件を満たす申請者」や「政策的に優先度の高い取り組みを行う申請者」に対して、あらかじめ追加の得点（加点）を与えるルールが設けられていることがあります。これが「加点措置」です。
採択率を上げるためには、もちろん事業計画の内容を充実させることが重要ですが、それに加えて加点要件を満たすことも大切な戦略になります。競争率の高い補助金ほど、加点が最終的な採択を左右する可能性が高くなるため、意識しておきたいポイントです。
加点措置の種類と背景
加点措置にはさまざまな種類があり、国や自治体が推進する政策目標に応じて設定されます。主な例として、以下のようなテーマが挙げられます。
- 地方創生や地域課題の解決
- 環境対策・SDGs推進
- 女性や若者、シニアなどの活躍推進
- 事業承継・次世代経営者の育成
- 災害からの復興支援
- 雇用創出や生産性向上
これらの政策課題をクリアしている事業ほど、国や自治体が重点的に応援したいと考え、加点措置を適用するケースが多いのです。
加点措置を活用するためのポイント
- 最新の公募要領の確認
加点措置は公募要領や募集回によって変更されることがあります。過去の情報だけに頼らず、常に最新の公募要領を入手して確認しましょう。 - 自社の事業計画を明確化
加点要件を満たすかどうかは、自社の事業計画をどこまで具体的に示せるかに大きく左右されます。「どんな社会課題を解決するのか」「どれほどの雇用を生むのか」など、具体的な成果と根拠を明示しましょう。 - 証拠資料・エビデンスの用意
「地域の課題解決に資する」「雇用を増やす見込みがある」など、加点要件を満たす証拠となる資料をあらかじめ準備し、申請書や添付資料で分かりやすく示すことが重要です。 - 不足があれば事前に対策を講じる
例えば、女性活躍推進が加点要件となっている場合は、社内の女性管理職比率を上げるための具体策や、育児休業取得率向上のための制度づくりなど、実際に取り組んでいると示せる体制づくりが必要になります。単なる「取り組み予定」だけでなく、現状のデータや今後の計画も提示すると説得力が増します。 - 専門家に相談する
中小企業診断士や行政書士、社会保険労務士など、補助金申請のサポートを行う専門家に相談することで、要件確認や書類作成の質が高まり、結果的に加点獲得につながりやすくなります。
具体例1：事業再構築補助金における加点項目
事業再構築補助金は、新分野展開や業態転換などによって事業再構築を目指す中小企業を支援する制度です。最新の公募要領（例：第13回公募）に基づく代表的な加点項目と、その背景・注意点は以下のとおりです。
- コロナ借換保証等の利用
- 要件：申請時に「コロナ借換保証」等で既存の債務を借り換えていること
- 背景：新型コロナウイルスの影響で資金繰りが悪化した中小企業を救済し、事業継続を支援する目的
- 注意点：借り換えを行っていても、申請時に完済している場合は対象外となるので要確認
- コロナ回復加速化枠（最低賃金類型）への申請
- 要件：コロナ禍からの経済回復を加速させるため、最低賃金引き上げに積極的に取り組む中小企業であること
- 背景：最低賃金の引き上げを通じて、労働環境の改善や消費喚起を狙う政策的意図
- 注意点：実際に賃上げを行う計画と、具体的な見込みデータを示す必要がある
- パートナーシップ構築宣言の公表
- 要件：パートナーシップ構築宣言をポータルサイトに公表していること
- 背景：大企業と中小企業の間で公正な取引関係を築き、共存共栄を実現する取り組みを促進する政策
- 注意点：単に宣言を出すだけでなく、具体的な取引改善策や成果を社内外で共有することが望ましい
- 健康経営優良法人の認定
- 要件：健康経営優良法人に認定されていること
- 背景：従業員の健康管理に積極的に取り組む企業を評価し、就労環境の向上を推進する狙い
- 注意点：健康経営優良法人の認定は要件が複数あるため、事前に健康施策や労働環境改善などの実践が必要
具体例2：小規模事業者持続化補助金における加点項目
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化をサポートする制度です。加点項目は「重点政策加点」と「政策加点」に分類され、各カテゴリから1項目ずつ、合計2項目まで選択可能です。
重点政策加点
- 赤字賃上げ加点
- 要件：賃金引上げ枠に申請し、なおかつ赤字決算の事業者
- 狙い：赤字であっても賃金アップに取り組む企業を支援し、従業員の生活改善や消費拡大につなげる
- 事業環境変化加点
- 要件：ウクライナ情勢や原油価格高騰の影響を受けている事業者
- 狙い：急激な原材料価格上昇や海外情勢に伴うリスクを負う事業者の経営を下支えする
- 東日本大震災加点
- 要件：福島第一原子力発電所の事故の影響を受けている特定地域の事業者
- 狙い：震災被害地域の復興支援を継続的に行うための措置
- くるみん・えるぼし加点
- 要件：次世代育成支援対策推進法や女性活躍推進法に基づく認定（くるみん認定、えるぼし認定）を受けている事業者
- 狙い：子育て支援や女性の社会進出を後押しする企業を評価し、より広く普及させる
政策加点
- パワーアップ型加点
- 要件：地域資源を活用した事業や地域コミュニティ型の取り組みを行う事業者
- 具体例：地元の特産品を活用した新商品開発や、地域住民参加型イベントの開催など
- 狙い：地域経済の活性化を促す
- 経営力向上計画加点
- 要件：中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業者
- 狙い：経営課題の分析や強化プランを策定し、持続的に成長できる体制を整備する事を促進
- 事業承継加点
- 要件：代表者が満60歳以上で、後継者候補が補助事業を中心に行う場合
- 狙い：高齢化が進む中小企業の経営者の代替わりを円滑に進めるための支援
- 過疎地域加点
- 要件：過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展につながる取り組みを行う事業者
- 狙い：過疎化が進む地域への産業誘致や経済活性化
- 一般事業主行動計画策定加点
- 要件：従業員100人以下の事業者で、女性活躍推進法や次世代法に基づく一般事業主行動計画を公表している
- 狙い：従業員が働きやすい環境を整備し、多様な人材活用を進める
その他申請ポイント
- 申請書の書き方や構成上のコツ
- 論理的な構成：「現状の課題 → 解決策 → 期待される成果」の流れで書くと分かりやすく、審査員にも好印象を与えます。
- 数値目標の明確化：売上高や雇用人数、環境負荷削減量など、なるべく定量的に示しましょう。
- スケジュール管理の重要性
- 補助金は申請期限があり、添付書類の準備や自治体・商工会議所への相談、認定書類の取得などに時間がかかります。逆算して計画的に動くことが採択の可否に大きく影響します。
- 地方自治体独自の補助金・優遇制度のチェック
- 国の補助金だけでなく、自治体独自の補助制度や税制優遇が並行して行われている場合もあります。ダブル活用が可能なケースもあるため、地元の商工会や自治体窓口に問い合わせてみるのがおすすめです。
- 専門家や支援機関との連携
- 商工会議所や中小企業診断士、行政書士、社会保険労務士、税理士など、補助金申請に精通している専門家との連携は大きなメリットがあります。書類作成の質が上がり、結果的に採択率の向上につながりやすくなります。
- 事後報告・実績報告の準備
- 採択後には、補助金の使途が正しく行われたかを証明するための報告が必要です。領収書や契約書の保管、支出先の明確化など、申請時から念頭に置いておくことで後の手間を減らせます。
まとめ
補助金の加点措置は、事業計画をさらに優位に評価してもらうための重要な要素です。特に競争率が高い補助金では、加点の有無が採択を左右する大きなポイントとなります。
- 常に最新の公募要領をチェックして加点要件を確認する
- 自社の事業計画との適合性を見極め、エビデンスをしっかり揃える
- 必要に応じて社内体制の整備や、専門家との連携で書類の精度を高める
これらを意識することで、補助金の採択率を向上させるだけでなく、自社の強みや経営戦略を再点検し、ブラッシュアップする良い機会にもなります。
もし補助金の申請や加点措置の活用について疑問や不安がある場合は、専門家や支援機関に気軽に相談してみてください。綿密な計画づくりと適切な加点活用によって、企業の成長や事業の拡大を効率的に進めていきましょう。
補助金申請についてのご相談
当社では、補助金の申請サポートをはじめ、加点措置を踏まえた最適な申請戦略の立案なども行っております。「どの補助金を選べば良いか分からない」「加点要件に該当するか知りたい」「申請書の書き方を相談したい」といったご要望がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。企業の特性や経営ビジョンに合わせて、最適なサポートをご提案させていただきます。
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