口座が欲しいのに作れない――新設法人が直面する壁
こんにちは。グロースコンパスのイシマキです。
ある日、設立したばかりの新設法人のオーナーからこんな相談を受けました。
「会社を作ったのに、銀行から口座開設を断られてしまいました。どうしたらいいのでしょう?」
このように、会社を立ち上げたばかりの事業者が「金融機関の口座を作れない」という問題に悩まされるケースが、近年急速に増えています。
一昔前なら、新設法人でも比較的スムーズに口座を開設できたのですが、今では慎重に審査を行う金融機関がほとんどです。
その背景にあるのが、マネーロンダリング(資金洗浄)や振り込め詐欺、反社会的勢力による口座の悪用などのリスク。
金融機関は、社会的責任のもと、取引先の信用調査に力を入れ始めています。
結果として、新設法人には高いハードルが立ちはだかるようになりました。
なぜこんなに厳しくなったのか?金融機関が気にするリスク要因
マネーロンダリング防止への強い義務付け
犯罪収益移転防止法などの法規制が強化され、銀行や信用金庫、信用組合などの金融機関には、厳格な本人確認や取引先の実態調査が求められます。
法人口座が犯罪利用されると金融機関自身も行政処分のリスクを負うため、“疑わしきは作らせず”というスタンスが強まっています。
合同会社・個人口座への慎重姿勢
登録免許税の安さや定款認証の不要さから、合同会社は設立コストを抑えられるメリットがあります。
その反面、反社会的勢力が悪用しやすいというイメージが根強く、銀行側もより厳しい審査体制を取るようになっているのです。
また個人口座も、近年は詐欺の受け皿として使われるケースが増えたため、開設ハードルが高くなってきています。
“横並び”意識で一気に広がる排除姿勢
一部の金融機関が「合同会社はまず受け付けない」というルールを導入したところ、全てとは言いませんが他の金融機関にもその方針が波及し、今では合同会社はもちろん、個人口座も含めて口座開設が格段に難しくなっています。
それでも大丈夫!新設法人が口座を作るための4つの方法
「こんなに厳しくなったらもう無理なの?」と、不安になった方もいるかもしれません。
しかし、真面目に事業をしようとしている方には、金融機関と良好な関係を築く方法がちゃんとあります。
地域金融機関との“長い付き合い”を活かす
もし、個人名義で定期預金や積立商品などを長年契約している金融機関があるなら、まずはそこに相談してみましょう。
普通預金だけでなく、積立や投資信託といった“深い取引”のある個人であれば、銀行側も「この人は信用に足るお客さまだ」と判断しやすくなります。
定期積金で担当者に事業実態を見せる
信用金庫や信用組合が扱う「定期積金」を利用すると、定期的に担当者が集金に来てくれます。
そこで、事業の進捗状況や新商品の案内など、リアルなビジネスの様子を見せると、時間をかけて信頼を築くことができます。
地道ですが、審査を通過するための強力なアピール方法の一つです。
日本政策金融公庫の創業融資を利用する
日本政策金融公庫で創業融資が決定した法人は、一定の事業実態や反社会的勢力でないことを公庫によって確認されているというお墨付きがあります。
そのため、「公庫の融資決定」を切り札に、地元の信用金庫や信用組合へ口座開設を申し込むと、比較的スムーズに話が進みやすいのです。
取引先や知人からの“紹介”を頼る
どの金融機関にも「重要取引先」と呼ばれる大口の預金者や融資先がいます。
もし事業上、そうした取引先とのつながりがあれば、その方から銀行や信金に口座開設を紹介してもらうと、審査が一気に進む可能性があります。
金融機関は「重要なお客さま」のお願いは無下にしづらいため、前向きに検討してくれるケースが多いのです。
事業計画書を用意してしっかりと説明する
しっかりとした事業計画があり、どういったビジネスモデルなのかを説明することで、真面目に事業を始めた会社なんだと金融機関にアピールすることができます。
事業計画書は経営の羅針盤として、具体的な目標や戦略を明確にし、企業の方向性を示します。
これにより、経営者や従業員が共通のビジョンを持ち、効果的に事業を推進できます。
しかし事業計画書はそういった機能だけでなく、企業の自己紹介ツールとして、投資家や金融機関、取引先に対して事業のビジョンや実現可能性を効果的に伝える手段となります。
また、信頼性を高め、資金調達やビジネスパートナーの獲得に有利に働きます。
しっかりとした事業計画書を作成することで、内部の経営管理が強化されるだけでなく、外部との信頼関係も築きやすくなり、持続的な成長を支える基盤となります。
「そんなこと言っても事業計画書なんて書けないよ」といった方は、各自治体で行っている創業支援、相談の窓口や弊社のような専門家に相談してみましょう。
最新情報を収集し、金融機関との関係を育てよう
こうした厳格化の流れは、今後もますます強まると考えられます。
「なぜこんなに面倒になったんだ」と嘆いていても事態は好転しません。
重要なのは、金融機関のルールやニーズを理解したうえで、地道に信用を積み上げることです。
特に新設法人の経営者の皆さまは、下記のポイントを改めて意識してみてください。
- 個人時代からの取引実績を活かす
- 定期積金などを通じて担当者と接点を増やす
- 日本政策金融公庫など公的機関の融資制度を活用する
- 周囲の信頼できる取引先や知人の紹介を頼る
- しっかりとした事業計画書を用意しておく
口座開設が難しくなった背景には社会全体の信用リスクが高まっていることがありますが、逆に言えば、誠実にビジネスを行う事業者がしっかりと事業実態を示せば、金融機関もきちんと扉を開いてくれます。
ちなみに
- 融資による資金調達を考えている場合は、地域密着の金融機関を選びましょう
今後、融資による資金調達を検討しているのであれば、信用金庫や信用組合などの地域密着型金融機関で口座を開設することをお勧めします。創業したての企業や規模の小さい中小企業は、大手銀行では相手にしてもらえないことが多いためです。売上が5億円を超えるまでは、資金繰りを支えてくれるのは間違いなく地域密着の信用金庫や信用組合だからです。 - 地域の金融機関で口座開設が難しい場合は、ネット銀行を活用しましょう
地域の信用金庫や信用組合でどうしても口座開設ができない場合は、ネット銀行での口座開設をお勧めします。ネット銀行は比較的手続きが簡単で、迅速に口座を開設することが可能です。ビジネスのスタート段階において、基本的な金融サービスを提供してくれるネット銀行を活用することで、事業運営をスムーズに進めることができるでしょう。
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