金利上昇が飲食店に与える現実的な影響
金利上昇の背景とその進行状況
2024年3月、日本銀行がついに長年続いたマイナス金利政策の幕を下ろしました。これに続き、同年7月には政策金利が0.25%に、さらに2025年1月には0.5%程度に引き上げられるという決定がなされ、市場金利は確実に上昇局面へと突入しています。
この一連の動きは、一見すると大手企業や金融機関に関係のある出来事のように思われるかもしれません。しかし実際には、私たち中小企業、特に日々の運転資金や設備投資に多くの資金を必要とする飲食業界にとって、決して無関係ではない重要な転機なのです。
借入負担増加がもたらす経営リスク
飲食店を経営されている皆様の中には、コロナ禍で打撃を受けながらも、何とか持ちこたえ、最近ようやく売上が戻ってきたという方も多いことでしょう。ようやく回復基調に乗ったと思った矢先、今度は「金利上昇」という新たな壁が立ちはだかっています。
例えば、店舗の新規出店や内装の改修、厨房機器の入れ替え、販促強化のための資金など、多くのケースで金融機関からの借入を利用しているのが現実です。このとき、借入金利が1%上がるだけでも、年間の返済額が数十万円、場合によっては100万円以上増加することになります。
飲食業界の経営者が感じている危機感

返済負担・利益減少・資金繰りの悪化
帝国データバンクが発表した最新の調査(2025年3月)によると、全業種の中小企業のうち57.6%が「借入金利の上昇は自社の業績にマイナスの影響を与える」と回答しています。中でも最も多かったのが、「返済負担が増える(69.2%)」「利益が減少する(50.9%)」という声でした。さらに、「資金繰りが厳しくなる」との回答も3割近くに上っており、これはまさに現場の実感ではないでしょうか。
“低金利慣れ”からの脱却が求められる理由
特に飲食業界においては、店舗運営にかかる固定費や仕入れコストが高止まりする一方で、販売価格への転嫁には限界があるというジレンマを抱えています。そうした中、金融負担までが増してくれば、「借りるのが怖い」「設備投資ができない」「既存ローンの返済が重たい」といった声が出るのも当然の流れです。加えて、これまでの“低金利慣れ”が染みついた経営スタイルを引きずっていると、金利上昇時代への転換にうまく対応できない恐れもあります。
しかしながら、すべてが悲観的な話ばかりではありません。この調査では、借入金利の影響を受ける企業のうち62.2%が「事業内容は変えずに対応する」としつつも、残る企業の中には「利益率の高い事業へのシフト」や「不採算事業からの撤退」など、明確な方向転換を検討する動きも見られました。
今こそ見直すべき、飲食店の利益体質

高原価メニューの見直しと営業効率化
利益率を重視した経営へのシフトが求められます。
たとえば、以下のような見直しが考えられます。
- 原価率の高い食材メニューの入れ替え
- 利益が出やすいランチタイム営業の強化
- デリバリー・テイクアウトの導入
- スタッフ配置の最適化
新たな収益モデル導入の可能性
さらに、サブスクリプション型サービスやイベント企画、地域密着型の販促活動といった新しい収益モデルも注目されています。複数の収益の柱を持つことが、金利リスクへの耐性強化につながります。
資金対策と金利上昇への具体的アプローチ
財務体質強化と価格見直しの必要性
さらに、「金利が1%上昇した場合にどう対応するか」という問いに対しては、「財務体質の改善(27.2%)」「価格の見直し(22.5%)」「繰り上げ返済(20.3%)」など、資金管理の強化に関心が集まっていることも明らかになりました。資金繰りや借入金の見直しといった“お金の管理”を見直すことは、金利上昇に対応する上で避けては通れない課題となっています。
公的支援制度を活用してリスクを軽減する
そしてここで忘れてはならないのが、公的支援制度の活用です。現在も数多くの補助金・助成金制度が用意されており、金利負担を軽減したり、新たな挑戦を後押ししたりする制度が活用可能です。
たとえば、以下の公的支援が考えられます。
- 「小規模事業者持続化補助金」:店舗改装・販促活動に最大200万円支援
- 「新事業進出補助金」:異業種参入・高付加価値化への支援で最大9,000万円(※従業員101人以上)
「小規模事業者持続化補助金」では店舗改装や販促活動に対して最大200万円の補助を受けられるほか、「新事業進出補助金」では、飲食店がこれまでとは異なる分野(物販やサービス業など)へ新たに進出する場合や、高付加価値な事業に挑戦する場合に、最大9,000万円※(補助率1/2、※従業員数101人以上の場合)の支援を受けられる可能性があります。こうした制度を上手に活用することで、金利上昇に伴うリスクを最小限に抑えながら、着実に成長へとつなげることができるのです。
専門家とともに描く、持続可能な飲食店経営

よくある悩みと相談先の重要性
時代の変化は避けられません。しかし、どう向き合うかは企業次第です。かつての低金利に依存した経営から一歩踏み出し、変化を受け入れ、対策を講じ、成長戦略を描く。今こそ、経営者としての“決断”が問われるタイミングではないでしょうか。
私自身、中小企業診断士として、飲食業を中心とした多くの経営者の方々と対話を重ねてきました。その中で強く感じるのは、「資金繰りのことを誰に相談すればいいかわからない」「補助金の情報はあるけど、どう活用すればいいのかがわからない」という悩みが非常に多いということです。
外部専門家とともに次の一手を考える意義
だからこそ、私は一人でも多くの経営者に、「安心して相談できる専門家」が身近にいることの大切さを知ってほしいと考えています。金利上昇で悩んでいる方、借入の見直しや補助金の活用に関心のある方、あるいはこれからの戦略を再構築したいと考えている方――ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
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飲食店の未来を守り、さらに伸ばしていくために、全力でサポートさせていただきます。
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